第4章 今後5年間に計画的に取り組む施策 第3節
3 九度山に誇りをもち夢を抱きたくましく生きる子どもの育成
(1) 九度山町の特色ある教育(英語教育)の推進
ふるさと九度山町で育ち、変化の大きい社会でたくましく、力強くはばたき、活躍する基礎的な力を子どもたちにつけてあげるのは公教育の最も大きな役割だと考えます。
そこで、九度山町では全領域での基礎的な学力を身に付けさせるのは勿論ですが、現代社会における英語の世界的な汎用性を考え、中学校3年生の義務教育を終了する段階で、日常会話程度の英語が話せる子どもの育成を目指しています。
そのためにも、幼児期から外国人ティーチャーとのほぼオールイングリッシュの遊びやゲーム・歌を通して英語に慣れ親しみ、小学校1年生から楽しみながら英語との出会いが生まれる英語活動につなげていきます。
また、小学校5年生、6年生では外国人アシスタントティーチャーと中学校の英語科の先生による教科としての小学校英語を行い、「聞くこと」・「話すこと」を中心にしながら、外国の文化や外国人とのコミュニケーションに興味を持つ心を育てることを大きな目標とし「読む」・「書く」の指導を行います。
令和2年度までの数年間実施した、中学生への英語教育に関するアンケートで、一番の壁になているのは小学校英語から中学校英語に変わる時に英語への苦手意識が強く生じているデータが出ました。
そこで、現在実施しているように中学校の英語の先生が、小学校5年生、6年生の教科としての英語の授業を外国人ティーチャーと一緒に行い、ネイティブな英語で授業が進められる時間を増やし子どもたちが中学校の英語科の先生との関係性を小学校時期から築きスムーズな中学校英語への接続を図っています。
そして、中学校の英語教育は、町として外国人アシスタントティーチャーを令和2年度から町独自でその人材を増やしたことにより、中学校専属の外国人アシスタントティーチャーが確保でき、各学校での英語科の先生とネイティブな英語を話す外国人アシスタントティーチャーとの授業を2倍に増やすことができました。こうしたことにより、外国人とのコミュニケーションに抵抗なく英語を学べる機会となり、中学校でも英語の授業を楽しむ子どもたちの増加につなげています。
今後ともこうしたシステムを継続し、小学校・中学校の接続をスムーズにしながら義務教育終了の中学校3年生までに日常会話程度の英語ができる子どもたちの育成に努めます。
(2) 保育所、幼稚園、小・中学校教育の教育活動の活発化
次代を担う子どもたちは、多様で変化の激しい社会の中を生き抜くために、自らの自立と社会的自立を図り、主体的・能動的な人間として、また、豊かな心をもった思いやりのある人間として成長していくことが求められています。学校教育は、長い人生を生きる基礎力と学び続けるための基礎力を養う時期であり、「自分で課題を発見できる力、自分で考える力、自ら判断する力、自分で学ぶ力」を身につけ、そのことにより「確かな学力の向上」、「他人を思いやる心」、「健やかな体力の向上」を支援する教育の推進を図らなければなりません。障がいのある子どもたちに対しては一人ひとりのニーズに応じた特別支援教育の充実と「合理的配慮」(※6)に基づいた環境整備を図るよう努めます。
(3)教育目標の達成
1.自己実現を目指し自立する子どもの育成
複雑で変化の激しい社会の中で、まず第一に自立する人間として、そして人間味あふれる人格を備えた人間として成長していく過程で、子どもたちの表現力、創造力、判断力、コミュニケーション能力の育成に努めます。そのため、幼稚園から中学校までそれぞれの発達年齢に合わせた教育理念を持ち、ベクトルを合わせた教育内容・方法の研究、教授法の改善を図りながら、これらの「ねらい」が実現できるよう取り組みます。
2.人を思いやる心豊かな子ども、自ら体を鍛える子どもの育成
各教科の学習をはじめ、人権学習、道徳教育、総合的な学習の時間、並びに地域の人々や自然と触れ合う課題学習(地域学習・環境教育)、文化芸術体験活動など多様な学習活動を通して人への思いやりや感謝の心、芸術文化や自然に対する豊かな感性、さらに、自ら育ったふるさとを愛する心を養います。
また、子どもたちの体力、運動能力を向上させるために、運動の意義や方法について理解を深めるとともに、幼児期からの運動に対する意欲の向上と運動習慣の確立に努め、青年期までの系統的なカリキュラムの中に体力向上のための効果的な活動を位置づけます。また、日常生活における体力向上のための有効な手法の普及・活用や楽しみながら運動できる機会づくりを促進します。
さらに、食育は、正しい生活習慣を確立するための基本的知識であり、知識の習得、道徳教育、体育教育の基礎として学校・家庭・地域が連携して推進することが極めて重要です。また、食育推進計画の策定を進めるとともに幼・小中学校を通した学校給食共同調理場方式による学校給食事業の継続、並びに、地産地消の積極的な推進やそれぞれの地域における特色ある食文化の継承に努めます。
3.確かな学力と強い探究心・応用力に富んだ深い学びのできる子どもの育成
今まで行われてきた一方向・一斉型の授業だけではなく、九度山町とのゆかりも深い秋田県由利本荘市の教育に学びながら、一人一台端末などICTや少人数指導、習熟度別指導、個別授業、ティームティーチングなども活用しつつ、個々の能力や特性に応じた学びによる基礎的な知識・技能の確実な修得や、子どもたち同士の学び合い、さらには身近な地域や学校内外の様々な人々との協働学習や多様な体験を通じた課題解決・探求型の学習など、学習者の生活意欲、学習意欲、知的好奇心を十分に引き出せる形態の学習の推進に取り組みます。
また、ALT等の外部人材の積極的な活用をはじめ、特別支援教育支援員などの設置を継続し、よりきめ細やかで児童生徒の実態に即した指導方法を実践します。
4.総合的な学習の時間を通じて、社会の形成に主体的に参画する人間の育成
社会の形成者としての自覚と、社会に貢献する人間としての自立を促すためには、「子どもは、家庭(=親)、学校(=教師・友人たちの異年齢集団)、地域(=地域の大人)との交流により発達する。」ことを基本理念に据えて、地域での体験学習、地域の人材を活用した総合的な学習の時間や地域における福祉ボランティア活動への参加など、社会とのつながりを大切にした教育活動の充実に努めます。
このような実践的な学びを通して、地域社会への帰属意識の形成を支援し、自他ともに大切にし、義務と責任を果たしながら積極的に社会に参画しようとする意欲や態度を養うことを目指した「市民性を養う教育」を推進します。
5.特別支援教育の充実、障がいのある児童生徒の学習ニーズに対応する教育の充実
障がいのある幼児・児童生徒の自立や社会参加ができるよう、一人ひとりが主体的に取り組む力をつけることを支援するという視点に立ち、一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難な面を改善または克服していけるよう適切な指導および必要な支援に努めます。
そのため、早期からの教育相談・支援、就学指導、就学後の適切な教育および必要な教育的支援全体を一貫した「教育支援」と捉え、「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」に基づき、一人ひとりのニーズに応じた特別支援教育の充実を図ります。
また、子どもの障がい等の状況に応じて、学校教育を受ける際に必要な「合理的配慮」に努め、適切な環境整備を進めます。
更に、「障がい」への理解・啓発を進めるとともに、教職員研修の充実、特別支援学校や教育相談機関、医療・福祉関係機関と連携し、一人ひとりの障がいや発達課題に適切に対応できる体制づくりを推進します。
6.ふるさと学習を通して地域の文化や伝統を重んじ国際社会に貢献することができる人間の育成
子どもたちが、わが町の伝統と文化(文化遺産)を尊重し学ぶことによって、自分たちを育んできた郷土の偉大さを知り、郷土を愛するとともに、自国や他の国々に対しても尊敬の理念を持ち、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことを基本に据え、伝統・文化に対する理解とそれを継承・発展させる教育を推進します。
また、子どもたちが、学校や地域の文化施設において優れた舞台芸術の鑑賞や文化芸術活動への参加ができる機会や、地域において民俗芸能、邦楽、茶道、華道などの伝統文化に関する活動を計画的に体験、修得できる機会の提供を支援します。
さらに、わが国の伝統的な文化であり、九度山町にゆかりある真田幸村公及び五女のお梅(お田の方・・・旧亀田藩城主の継室)が嗜んだ武道(なぎなた)の振興を図ります。
7.職業教育、キャリア教育の推進
社会に貢献する人間の育成にとって望ましい勤労観・職業観を育むことは義務教育の段階から重要であり、地域産業や地域社会との連携・交流による実践的教育(仕事調べ・職場体験)を積極的に取り入れ、社会人として、職業人として必要な人間性を養うとともに、生命・自然・ものを大切にする心、規範意識、倫理観等を小学校から中学校へとキャリアノート等を活用しながら育成します。
そのため、外部人材の活用、「ものづくり体験」、先端技術や経済社会の新しい動きに直接ふれる機会を与えるとともに、中学校では職場体験やインターンシップ(就業体験)などの機会を取り入れ、子どもの職業意識を養うキャリア教育を積極的に推進します。
8.道徳教育、教科横断的な学習を通して社会性を高める教育の推進
子どもたちの豊かでいきいきとした心情や規範意識、自主的な判断の力や公共の精神など内面的な資質を育てていく観点から道徳教育の充実を図ります。各教科や学校の諸活動を通して行われる道徳教育が正しく身につくよう指導するために、指導計画に基づいた実践に生きる学習として進めます。また、思いやりのある共生の社会を形成していく担い手としての自覚と行動する力の育成や社会の一員としての人格を磨く指導に努めます。
(4) 学校(園)の自主性の確立と開かれた学校(園)づくり
1.教職員が子どもを中心に据え、取組の成果や課題を自主的に評価
子どもたちが「自立・自治・自学」ができる学校づくりを目指します。そのためには、幼稚園・学校におけるそれぞれの教育目標とそれに向けた運営計画を明確にするとともに、その達成状況を点検・評価し、改善に向けて組織的に取り組んでいくことが必要です。そのため、すべての幼稚園・学校において自己評価を実施するとともに、学校運営協議会委員や保護者など、学校関係者による評価・検証を実施し、公開します。
2.学校の課題を地域の課題に、地域の課題を学校の課題にし、コミュニティ・スクール制度を活用し、学校(園)・家庭・地域の連携を強化
「学校開放月間」等の取組を生かし、幼稚園・学校を地域に開き、地域と連携して子どもたちの学びを支える基盤となる学校運営協議会を中心としたコミュニティ・スクール制度の運用と共育コミュニティの連動により積極的かつ効果的に、保護者や地域住民の意見や提言を生かしながら、学校運営を図っていきます。一方、学校は地域住民の生涯学習の拠点としても重要であり、施設の開放や人材の活用を促進します。
(5) 教員の資質の向上と一人ひとりの子どもに向き合える環境の整備
秋田県由利本荘市への視察も含め、教員の専門性や資質の向上を図るため、県教育センター学びの丘等の研修・調査研究機関、大学等の高等教育機関等と連携し、校長はじめ管理職等の研修、中堅層や重要課題について指導的役割を担う教員に対する研修、不登校対応や経験の少ない若い教員の資質向上を図るための研修等への積極的な参加を支援します。教育課題の解決に資する各種研修や講演会などを実施し、教職員の資質向上に努めます。また、教育研究団体等の自主的な研究活動を積極的に支援します。
(6) 幼児期から18歳までの切れ目のない支援の充実
生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育は教育の基礎でもあり、就学前の教育・保育を推進する幼稚園教育の充実は重要課題です。幼稚園教育要領を着実に実施するとともに、子どもの育ちの連続性を踏まえ小学校との円滑な接続を推進します。
また、幼稚園教員の資質向上を図るため、県子ども未来課等と連携し、特別支援教育、人権教育、子育て支援、給食・食育などの専門研修の受講を促進します。そして、子ども・子育て支援法等に基づき、一時預かり(預かり保育)、満3歳児の積極的な受入れや他の民間子育て支援サークルも利用しやすい枠組み作りの工夫、幼稚園給食等を充実し、保護者に優しい子育て支援の拡充を図ります。
更に、令和3年4月より発足しました行政の縦割りの垣根を取り払い住民課、福祉課、教育委員会が主管となり母子保健推進委員、主任児童委員、有識者の方々から構成する九度山町家庭教育支援サポートチームを立ち上げ、子育て相談(小1、小3、小5、中1家庭への全戸訪問等)・家庭教育講座・子育て情報の提供等の取組により18歳までの切れ目のない家庭教育支援に努めます。
(7) ふるさと教育の推進とコミュニティ・スクールの充実
自分の生まれた町、過ごした町の伝統・文化を学びの糧として受け止め理解し、さらにそれを継承・発展させるための教育を推進することは極めて重要です。子どもたちが成長した時、自分が生まれた場所、自分を育てた地域のことを自信を持って語れることがどれだけ誇らしいことでしょう。
九度山町の恵まれた自然環境や、世界遺産、数々の重要な有形・無形文化財などについての学習活動により理解を深め、地域のすばらしさに気づくことにより、我がふる里への誇りや地域への帰属意識の高揚に努めます。
そのため、各教科、総合的な学習の時間、特別活動や校外活動の中に我がまちの文化資源を教材や体験学習の場として取り入れ、計画的にふる里に関わる学習の推進に努めます。また、社会科副読本「わたしたちの九度山町」や特色ある英語教育につながる「九度山まちなかおもてなしBOOK」の活用に努めます。
また、紀州髙野紙の紙漉体験、世界遺産や文化財めぐりの案内を想定した「子ども語り部」の養成などの「ふるさと教育」の推進や、コミュニティスクール制度の充実を図る中で地域の人材を広く活用するとともに、全国・海外で活動する郷土出身者の招聘等コミュニティスクール背戸の根幹となる子どもたちの「学びの場」は学校だけではなく地域の人・地域のあらゆる施設・環境が学びの場となるという視野で学校教育・社会教育を進めることに努めます。
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